
「生損保研究会ぐるーぷ31」は(一財)日本消費者協会主催の第31期消費生活コンサルタント養成講座を修了した翌年の平成5年(1993年)に発足しました。
保険関連の消費者問題に取り組んでおられたコンサルタントの先輩の指導のもとに行った「生命保険販売窓口実態調査」にはじまり、保険商品の内容や販売の実態、広告・表示などの調査・研究を行っています。その結果を各保険会社や消費者に伝えることにより、保険契約などのトラブル防止・解決を目指し消費者と保険会社のギャップを埋めるために活動しています。
ぐるーぷ31のあゆみ
第1回 | 1994年 | 生命保険を契約するとき |
第2回 | 1995年 | 消費者にとって分かりやすい保険設計書とは |
第3回 | 1996年 | 生命保険のよりよい見直しとは |
第4回 | 1997年 | 医療関連保険に関する調査―がんの扱いをポイントにー |
第5回 | 1998年 | 生存給付金付き保険について |
第6回 | 1999年 | あなたに合った保険商品選びー保険商品の新商品からー |
第7回 | 2000年 | 本当に安いのかな?自動車保険(任意)より |
第8回 | 2001年 | 事例を通してみる生損保の告知義務と通知義務 |
第9回 | 2002年 | 医療関連の保険―消費者が民間の医療保険に求める保障 |
第10回 | 2003年 | 変額個人年金保険って何? |
第11回 | 2004年 | その医療関連保険、本当に必要? |
第12回 | 2005年 | 生命保険の個人情報保護ってどうなってんの? |
第13回 | 2006年 | 契約の手引きで保険金の不払いは解消できるかシンポジウム「消費者が求める金融情報とはー保険商品を中心にー」 |
第14回 | 2007年 | 変額個人年金保険の販売実態と各社発行書面を見て |
第15回 | 2008年 | なんで出ないの?医療保険・がん保険の給付金 |
第16回 | 2009年 | 消費者視点からみた宣伝広告・表示 |
第17回 | 2010年 | 保険法改正にともなう健康関連の告知について |
第18回 | 2011年 | 消費者は保険の見直し方法を理解しているか |
第19回 | 2012年 | 海外旅行にともなうトラブルに対する保障(補償)について |
第20回 | 2013年 | 消費者にとって保険の失効とは |
第21回 | 2014年 | 来店型保険ショップ・銀行窓販等の代理店販売の実態 |
第22回 | 2015年 | これでわかるの?保険会社のホームページ |
第23回 | 2016年 | 民間の介護保険は本当に役に経つの? |
第24回 | 2017年 | ゲームで学ぼう保険の知識〜がん保険・傷害保険〜 |
第24回 | 2017年 | ゲームで学ぼう保険の知識〜がん保険・傷害保険〜 |
第25回 | 2018年 | 相談現場における保険の今 タブレット端末利用アンケート |
第26回 | 2019年 | 一時払い外貨建て保険の銀行窓口販売実態 |
第27回 | 2020年 | 「一時払い外貨建て保険110番からみえてきたもの」 「若年世帯の生命保険」 |
第28回 | 2021年 | 「そのフレーズ 消費者の思い込みを誘っていませんか」 1.リターン保険の広告 2.健康志向特約そのメリットは 3.就業不能保険における精神疾患 4.動車保険のロードサービス 5.少額短期保険の更新 |
第29回 | 2022年 | 「電磁的記録によるクーリングオフ通知と契約更新」 |
第29回 調査研究発表会報告「電磁的記録によるクーリング・オフ」と「保険の契約更新通知と自動更新」
◎『電磁的記録』によるクーリング・オフ
2022年5月に施行された保険業法改正において、保険契約のクーリング・オフ通知方法に電磁的記録が加わった。当改正によって、保険会社へのクーリング・オフ通知手段は、従来の「書面(ハガキ等)による方法」に加えて「電磁的記録(各社のホームページ等)による方法」が可能となった。このことによって、特定記録郵便か書留料金を支払って送付する必要がなく、郵便局等の営業時間外の夜間や通勤の移動中でもスマホからクーリング・オフの申し出が可能になり、消費者の利便性は広がった。保険各社は、この電磁的記録によるクーリング・オフ通知の方法を保険契約者にきちんと伝わるようにしているのだろうか。
ぐるーぷ31は保険各社が電磁的記録によるクーリング・オフ通知をどのように説明しているのかを知るために保険各社にアンケート調査を行った。回答のあったほとんどの保険会社が「電磁的記録によるクーリング・オフ」について契約のしおりや注意喚起情報に記載し、そしてHP上で情報提供している保険会社もあったが、多くの問題点があった。
<問題点>
①「電磁的記録」という消費者にとって馴染みがなく、具体的にどのような方法なのか理解しにくい。それを解りやすく説明している保険会社は無かった。
②HP掲載のクーリング・オフ通知専用フォームからクーリング・オフ通知行うよう重要事項説明書等に記載しているが、当通知専用フォームにたどり着くことが容易ではないものが多かった。
③HP以外、電磁的記録の方法はEメール・FAX等もあるが、その記載がない。
④クーリング・オフは8日以内であればいつでも可能なはずが、深夜や休日は利用時間外としている会社やクーリング・オフ通知はがきに記入する項目より、電磁的記録の場合は入力項目を増やす保険会社があり、クーリング・オフをしにくくさせていた。
<各保険会社へ>
生命保険は長期にわたる高額商品であるがゆえに契約は慎重さが求められる。契約申し込み後に考え直すことができるクーリング・オフ制度は、消費者にとって最大の権利である。経済的負担が少なく、時間的余裕もできる「電磁的記録によるクーリング・オフ通知」は消費者の利便性を高める。電磁的記録が追加されたクーリング・オフ制度は、まだ始まったばかりだが、今後、消費者にとって使いやすい「電磁的記録によるクーリング・オフ通知」となるよう保険各社に改善を望む
◎保険の「契約更新通知」と「自動更新」について
生命保険には一定期間だけの保障で、期間終了後も保障を続けたいのであれば「更新」手続きが必要となるものがある。同一保障の更新であっても年齢が上がれば保険料も上がる。更新時に保障を見直し、保険金額を低くすることで保険料を安くしたり、更新しないという選択もある。しかし、多くの保険会社はこの「更新」を保障が途切れることを避けるという理由で、加入者から更新しない意思を示さなければ、「自動更新」にしている場合が多い。一方、消費者はこの「更新」について理解が十分でないため、更新時に保険料や保障内容の確認をせずに自動更新され、後に保険料が高額になったことを知ってトラブルになることがある。
ぐるーぷ31は今回、保険会社に「どのように更新を伝えているか」のアンケートを行い、その内容を調査した。その結果、「口頭で」、または「保険設計書で」という回答が多くあったが、更新の数カ月前には改めて書面で通知する保険会社が多く、更新通知書のサンプルが数社から送られてきた。
この更新通知書で消費者が最も必要とする情報は「保険料の比較」ではないだろうか。送られてきたサンプルの中に更新前、更新後の保険料の比較が大きく記載され、更新を「する」「しない」を判断しやすく、更新しない場合は更新通知書に付いているはがきを送ればよいだけで、シンプルでわかりやすいものがあった。しかし多くの保険会社は「更新通知」にあれもこれも情報を載せる為、更新前後の保険料が他の情報に紛れ、分かりにくくなっていた。また保障内容を変更しない場合「お手続き不要です」と目立つように記載している通知書もあるが、高くなる保険料に対し「更新後の保険料をご確認ください」という記載がない。
一見親切に見えるお手続き不要の「自動更新」には「高齢化」という大きな落とし穴がある。人は50代をピークに経済判断力は下降傾向にあり、75歳を過ぎると急降下するという研究結果がある(「高齢化社会を認知機能を支えるという視点からデザインする」駒村康平慶応義塾大学教授 慶応義塾大学ファイナンシャルジェントロジー研究センター長)。保険会社は、70歳代の新契約に対しては高齢に配慮して慎重だが、自動更新には配慮されていない。高齢になれば「これまで通り」または「簡単な方を選択」という傾向があり、手続き不要の「自動更新」は高齢者にとって危険な選択となりかねないことに警鐘を鳴らしたい。なお、今回「自動更新はしない」と回答した会社があった。自動更新を避け、新規加入と同等に必ず説明し、高齢者の場合、更新時にも家族の同意を求めている。高齢化の中では「更新」にもこのような細やかな配慮をしていくべきではないだろうか。(河野順子・天辻悦子)
ぐるーぷ31の活動に関する過去の記事
NPO法人「消費者情報ネット」コネット(Consumer's Information Network)は、消費者問題の専門家集団です。






おしらせ
コネット解散のお知らせ!
2023年4月22日の社員総会にて「解散」が承認されました。
コネット会員の皆様、賛助会員企業の皆様
「NPO法人消費者情報ネット」が、18年もの長きに渡り活動できましたのも皆様方が
辛抱強く、温かく支え、ご協力いただいた賜物と心より感謝申し上げます。
ここに謹んで、ご報告と御礼を申し上げます。 誠にありがとうございました。
特定非営利活動法人消費者情報ネット
理事長 石原純子
第18回総会&解散総会のご案内
日時 2023年4月22日(土) 10時から
場所 大阪産業創造館 5階研修室A
記念講演会
テーマ「どうしてコネットはできたのか?想い出を語る
〜消費者団体のつくり方〜」
講師 坂東俊矢氏(京都産業大学教授・弁護士・コネット会員)
◎終了後、食事会を予定しています。
◎コネット会員・賛助会員企業の皆様には近日中に総会資料をお届けします。
問い合わせ先 コネット事務局 connet@npo-connet.org
第29回 調査研究発表・意見交換会のご案内
※終了しています。報告は「ぐるーぷ31」のページをご覧ください
日 時 2022年10月14日(金) 13:30〜16:30
場 所 エル・おおさか(大阪府立労働センター)南101
テーマ
1部 「クーリング・オフの電磁的記録って解る?」
「契約更新後の契約内容は消費者に理解しやすいか?」
2部 意見交換会
参加費 資料代1人3,000円 コネット賛助会員1人1,000円
参加方法 会場での参加とZoomオンラインとの併用とします。
お申込み 企業名・所属・お名前・参加方法を書いてメール
にてお申し込みください。
オンライン参加の方には後日招待URLをお送りします。
主催 NPO法人消費者情報ネット 生損保研究会ぐるーぷ31
問合せ Mail connet@npo-connet.org 電話 06-6311-3456